マキノ町牧野から赤坂山の山腹にある粟柄峠を経て福井県側に下り、美浜町松屋~新庄を経て河原市に至る道は「粟柄越」と呼ばれる旧街道で古文書には赤坂海道とも記されている。古代より明治期に至るまで、この道は若狭と近江、京を結ぶ重要な街道で、海産物、塩、米、炭などを牛の背に載せて運搬したらしい。今も所々に見られる石畳や尾根沿いのアイグロマツの並木などが、往古の繁栄を偲ばせている。この粟柄越から赤坂山~明王禿~三国山の山腹を経て、マキノ町白谷と敦賀市粟野地区を結ぶ黒河林道の峠付近に至る約8kmの登山道は、昭和53年(1978年)滋賀県により「赤坂山歩道」として整備されたものである。この歩道沿いには、ブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹林やベニドウダンの群落をはじめ、キンコウカなどの珍しい湿原植物、オオバキスミレやカタクリ、オオイワカガミ、トクワカソウなどの群落もある。この貴重な自然植生がいたるところに見られる赤坂山は、「山と渓谷社」が選定する「花の百名山」に選ばれている。