海津のまちはずれの墓地の中に1本大きくそびえる「清水の桜」は、樹齢300年を越えるエドヒガンザクラで、高さ16m、幹の周り6.4mと県内最大級を誇り、県の自然記念物に指定されている。作家・水上勉の小説「桜守」で、主人公の弥吉が海津を訪れる。そこでこの巨桜に目を奪われ、その下にある軍人達が眠る共同墓地に思いを馳せた。戦死すればこの櫻の木の下へ戻ってこられることを夢に描いて召されていった兵士たち。だれもが折ったりしない枝を見て、村人が慈しんで育てる巨桜もあるのだということを思い、やがて弥吉もこの木の下に眠ることになるのだった…。また、この桜はその昔、加賀藩主前田候が上洛の折に何度も振り返り眺めたことから「見返りの桜」とも呼ばれている。例年海津大崎の桜より2~3日早く満開となり、ひときわ濃いピンクが淡緑の山中に映える姿は見事である。